リウマチ性多発筋痛症(PMR)
PMRとは
リウマチ性多発筋痛症(PMR)とは、肩や太もも、腰など手足の付け根部分に突然のこわばりと痛みが生じ病気です。内科外来ではコモンディジーズ(日常的によく遭遇する疾患)の一つであり、ステロイドが非常によく効くのが特徴です。PMRの約20-30%に巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)が併発します。名称が「リウマチ性」とついていますので、関節リウマチと間違われることもありますが、関節リウマチとは別の病気です。
PMRの疫学・原因
日本ではPMRの患者さまは50歳以上の人口10万人につき約1.5人といわれています。男女比は1:2で女性に多く、50歳以上から多くなり、発症のピークは70-80歳代なります。PMRの原因は現在のところ不明ですが、何らかの血管炎(血管の炎症)が関与しているといわれています。
PMRの症状
- 関節のこわばり(両上腕~肩、腰)
- 関節痛(両上腕~肩、腰)
PMRでは、後頚部~肩、上腕、股関節、太ももなど、四肢の付け根側の関節周囲に突然のこわばりと痛みが出現します。痛みが強いため、肩を上まで挙上することが難しくなったり、立ち上がるのが困難になる場合もあります。また、巨細胞性動脈炎を合併すると、こめかみの痛みや視力が低下するといった症状が併発してくることもあります。
リウマチ性多発筋痛症と関節リウマチの違い
PMRは70-80歳代に発症年齢がピークにあるため、特に高齢発症の関節リウマチとの鑑別が重要になります。PMRは「ある日、突然、両肩が痛くなって挙げられない」など急性発症することが特徴的です。一方で、関節リウマチではここ「数か月、膝が痛い」など、発症が比較的ゆっくりケースが多いです。PMRでは採血上、関節リウマチで上昇しやすいRFや抗CCP抗体は陰性化していることが多くなります。また、ステロイド治療への反応性がPMRは関節リウマチに比べて良好なことも特徴的になります。
PMRの検査
- 採血
- 尿検査
- 胸部レントゲン
- 関節レントゲン
- 関節エコー
当院の外来でPMRを疑った場合には、関節リウマチも鑑別に挙げるため、基本的に関節リウマチと同様の検査を行っています。関節リウマチに特異的な抗体検査(抗CCP抗体、抗Gal欠損抗体)含めた採血、尿検査、胸部・関節レントゲン検査などを行い、全身の評価を行います。また関節エコー検査を行い、関節局所の炎症や滑液包炎などの評価をしていきます。
PMRの分類・診断基準
PMRの診断は、前述のように関節リウマチやその他の関節痛を起こす疾患との鑑別が重要になります。外来では、まずBirdの診断基準を参考にPMRの可能性を考えます。また、2012年にEULAR/ACRから関節超音波検査の結果を含んだPMRの分類基準が提唱され、当院でもPMRを疑った場合には関節超音波検査を含めて精査を行い、総合的に診断を行っています。
PMRの治療
- 副腎皮質ステロイド
- 免疫抑制薬
PMRの治療は副腎皮質ステロイドが中心となります。比較的ステロイドに反応の良い病気ですが、徐々にステロイド量を減らしていくと途中でPMRが再燃することがあります。その場合には免疫抑制剤を加えて治療を強化していきます。
乾癬性関節炎(PsA)
PsAとは
乾癬性関節炎(PsA)とは、皮膚に炎症が起こって痒み・痛みが生じる「乾癬」に、関節の腫れや痛みが加わった病気です。PsAでは、骨と筋肉を繋いでいる腱や靭帯に炎症が起こり(付着部と呼びます)、それに伴って周囲の関節に炎症が波及して症状が出現してきます。
PsAの疫学・原因
日本ではPsAの患者さまは人口の約0.5%前後といわれています。男女比はほぼ同等で、30-40歳での発症が多いです。乾癬患者さまの約10-15%程度にPsAが生じるといわれています。PsAの原因は現在のところ不明ですが、何らかの免疫異常が関与しているといわれています。
PsAの症状
- 関節痛(手指、足首、脊椎等)
- 皮膚症状
- 爪病変
- 目のかすみ、視力低下
- 下痢
PsAの症状として代表的なのが手指や足首の関節痛です。関節リウマチと違って、指の第一関節にも痛み・腫れが生じることがあるのが特徴的です。また、PsAでは左右の手足に非対称に痛みが生じることが多くなります(関節リウマチでは、両手、両足など左右対称に痛みが生じることが多い)。アキレス腱周囲の腫れや痛みなど、足首の症状を訴えられる患者さまもおられます。多くのPsAの患者さまにはすでに皮膚病変が出現していますが、10%程度の患者さまでは皮膚病変に先行して関節痛が生じることもあります。爪乾癬と呼ばれる爪の変形をきたすこともよくあり、爪に点状の陥凹が生じたり、爪が分厚くなったり、二重になって剥がれたりすることもあります。また、眼にぶどう膜炎と呼ばれる炎症を起こして、眼のかすみや視力低下を起こすこともあります。
PsAの検査
- 採血
- 尿検査
- 胸部レントゲン
- 関節レントゲン
- 関節エコー
- 眼科紹介
当院の外来でPsAを疑った場合には、関節リウマチも鑑別に挙がるため、基本的に関節リウマチと同様の検査を行うことが多いです。関節リウマチに特異的な抗体検査含めた採血、尿検査、胸部・関節レントゲン検査などを行い、全身の評価を行います。また、関節エコー検査を行って関節の炎症が付着部炎なのか滑膜炎なのか評価を行い、総合的に診断をつけていきます。視力低下症状等がある場合には、近隣眼科に紹介させていただく場合もあります。
PsAの分類・診断基準
PsAの診断は、CASPER診断基準を用いることが多いです。
PsAの治療
- 消炎鎮痛剤(NSAIDs)
- 免疫抑制剤
- 生物製剤
PsAの治療は、消炎鎮痛剤で開始します。それでも関節症状が改善しない場合には、免疫抑制剤を使用して治療を強化していきます。免疫抑制剤でも効果が不十分な場合には、生物製剤を追加して加療を行います。