心不全
心不全って何でしょう?
心臓は、身体中に血液を巡らすためのポンプとして、休むことなく1日中拍動を続けています。心不全とは、この「心臓のポンプ機能が弱まること」で血の巡りが悪くなり、全身にさまざまな症状が現れます。
心不全は、大きく「急性心不全」と「慢性心不全」に分けられます。
急性心不全とは、心筋梗塞など何らかの原因で急に心臓のポンプの機能が弱まり、急に心不全症状が出るものです。
一方、慢性心不全とは、高血圧などで心臓に負担が徐々にかかり、ゆっくりと心臓のポンプ機能が弱まり、心不全症状が出てくるものです。
心不全の原因は?
- 心筋梗塞
- 不整脈
- 弁膜症
- 動脈硬化
- 過労
- ストレス
- 肺炎
心不全の原因は多岐にわたりますが、急性心不全では心筋梗塞や不整脈などにより、心臓自体の動きが急激に悪くなります。また過労やストレスで一時的に急性心不全が生じることもあります。一方、高齢者の方などで高血圧や糖尿病、高脂血症などの影響で長年にわたって動脈硬化が進行していくと、徐々に慢性心不全を生じるケースもあります。
症状
- むくみ
- 食欲低下
- 体重増加
- 息切れ、呼吸苦
- 動悸
心臓は身体中に血液を送るポンプのため、心不全が進行すると、血液の循環が悪くなります。すると、手足から血液が心臓に戻りにくくなり、まず足のむくみが出てきます。特に人の血管の構造から、左足からむくんでくる方が多いです。その後、さらに心不全が進むと、手指や顔面にまでむくみが進行し、身体中に水分が溜まることにより体重増加を認めるようになります。症状が強い場合には、1週間で2-3Kgも体重が増えることもあります。また、肺にも水が溜まってくるため、息切れや呼吸苦を感じる方も出てこられます。
検査
- 採血検査
- 胸部レントゲン
- 心電図
- 心臓エコー
当院に心不全疑い(特に慢性心不全)で来院された患者さまには、これまでの病気の経験や現在の内服薬、最近の体重の変化などを伺います。また血圧測定を行い、血圧が高い患者さまには自宅での家庭血圧測定をお願いする場合もあります。これらの結果、やはり心不全を疑う場合には、採血にて動脈硬化のリスク(糖尿病、高脂血症等)や心臓の負担の状態を評価します。また、胸部レントゲンを撮影して心肥大の有無や肺病変がないかを調べたり、心電図や心臓エコー検査を行って、不整脈の有無や心臓自体の動きの評価を行います。
重症度
心不全の重症度は大きく、4段階に分けられます。Ⅰ度が最も軽く、Ⅳ度が最も重い状態で、数値が大きくなるに従い予後も悪くなります。
心不全の経過
特に高齢者の患者さまでは、心不全が進行してくると、どこかで急激に心臓の機能が悪化し、入院にて治療をされる機会が出てきます。その後、加療により心臓の機能は少し回復しますが、風邪などをきっかけにして再度急激に心臓の機能が悪化し、再入院といったパターンを繰り返し、階段状に心臓の機能が低下していくケースが多くなります。
治療
心不全の状態により治療は変わってきますが、当院に来院された時点でバイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸状態、酸素状態など)を測定し、状態が悪い場合には近隣の救急病院に搬送させていただく場合があります。
特に急性心不全の原因である心筋梗塞などでは、心臓の栄養血管(冠動脈と呼びます)が詰まってしまった状態ですので、閉塞してしまった部分を再開通してもらうため、すぐに救急搬送をさせていただきます。
慢性心不全の場合には、血圧や糖尿病、高脂血症など動脈硬化の原因となるような病気の治療を行いつつ、心臓にかかる負担を抑えるお薬を適宜使用していきます。
心不全の治療薬の種類
- 血管拡張薬(ACE阻害剤、ARB)
- β遮断薬
- 抗アルドステロン薬
- 利尿薬
- ジキタリス製剤
心不全の治療薬には、心臓にかかる負担を抑える血管拡張薬としてACE阻害剤やARBといったお薬を使用します。また、慢性心不全などでは、心臓を休ませてあげて心臓の負担を軽減するβ遮断薬を使用することもあります。また、心不全が強く身体に水が溜まっている場合には、利尿剤を使用して、尿から水分を出して心臓の負担を軽減させることもあります。
心不全の予防のために
- 内服薬をきちんと内服する
- 規則正しい食事、生活
- 塩分を控える
- 水分を控える(医師と相談して)
- 体重測定(むくみの管理)
- ストレスを溜めない
- 風邪の予防
狭心症
狭心症って何でしょう?
心臓は、身体中に血液を巡らすポンプの働きをする臓器です。心臓の周りには心臓自体に栄養を送るための冠動脈という血管が走っています。この冠動脈が何らかの原因で細くなり、一時的に心臓に血液が送られなくなり、胸痛などの症状をきたす病気を「狭心症」と呼びます。
狭心症の種類
- 労作性狭心症
- 安静時狭心症
- 不安定狭心症
「労作性狭心症」とは、階段を上がったり重いものを持ったりなど、軽い運動をしたときに胸痛発作などが現れる状態です。 「安静時狭心症」は、別名が冠攣縮性狭心症と呼ばれ、ストレスや温度差、飲酒などが原因で発作を生じる状態です。
(「不安定狭心症」とは、冠動脈のなかに生じている動脈硬化の部分(プラーク)が非常に壊れやすい状態で、日に何度も発作が起こることがあります。このプラークが壊れると、心筋梗塞になる危険が高くなります。
狭心症の原因は?
- 労作性狭心症:動脈硬化
- 安静時狭心症:タバコ、アルコール、不眠、過労、ストレス、温度差
症状
- 胸痛(5~10分以内)
- 胸の違和感(胸がぎゅっと締め付けられる感じ)
- 顎、みぞおちの痛み
- 左手、左肩の痛み
狭心症の症状は、ほとんどが胸の痛みです。胸がぎゅっと締め付けられるような違和感を訴えられる場合もあります。狭心症により痛みは顎に出現することもあり、虫歯だと思われることもあります。また、みぞおちの痛みではじまることもあり、胃の痛みと感じられることもあります。左手や左肩の痛みを覚えられることもあります。
労作性狭心症の症状は、階段を上った時など軽い運動をしたときに発症し、一方、安静時狭心症の症状は、夜間や明け方、午前中などで冷たい空気に触れたときなどに発症します。 それぞれ持続時間はおよそ5~10分以内と短時間です。
検査
- 心電図
- 採血検査
- 胸部レントゲン
当院に狭心症疑いで来院された患者さまには、これまでの病気の経験や現在の内服薬、タバコ歴、胸痛の出現状況などを伺います。また血圧測定を行い、血圧が高い患者さまには自宅での家庭血圧測定をお願いする場合もあります。その後、心電図検査を行います。今、胸痛があるタイミングで心電図検査しない限り、心電図上では狭心症の所見は現れないのですが、正常時の心電図を検査することで、心肥大や不整脈、虚血性変化(心臓に血液が十分に届いていない状態)などがわかります。
また、糖尿病や高脂血症など動脈硬化を促すような生活習慣病があるか調べるために採血検査を行います。胸部レントゲンを撮影して心肥大の有無やその他の病変がないかなどを調べることもあります。
狭心症では何に気を付けるの?
冠動脈のなかに生じている動脈硬化の部分(プラーク)が非常に壊れやすい状態である不安定狭心症の患者さまでは、日に何度も発作が起こることがあります。このプラークが壊れると、心筋梗塞になる危険が高くなるので、注意が必要です。
狭心症の治療
- 発作を鎮める治療
- 発作を予防する治療
- 手術
狭心症の治療として、まず「発作を鎮める治療」があります。胸痛発作を鎮めるためには、ニトログリセリンという冠動脈を一時的に拡げてくれるお薬を使用します。胸が痛くなった時にこの薬を口の中に入れて、舌の下で溶かします。この薬は飲みこんでしまうと吸収が遅くなり、効果が不十分になります。次に「発作を予防する治療」として、細くなった冠動脈を長時間、拡げてくれる内服薬を使用します。これらのお薬で効果な不十分な場合や、冠動脈が非常に細くなっている場合には、「手術」を行い、細くなった部分を拡げる治療を行います。
心不全の治療薬の種類
発作を鎮める治療 | ニトログリセリン |
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発作を予防する治療 | 持続性硝酸薬 β遮断薬 Ca拮抗薬 |
コツ
- ・ニトログリセリンは舌の下で溶かすこと
- ・口が渇いているとニトロは溶けにくいので、水で潤してから口に入れる
- ・1錠で改善がなければもう1錠内服し、それでも改善なければ受診
心筋梗塞
心筋梗塞って何でしょう?
心臓は、身体中に血液を巡らすポンプの働きをする臓器です。心臓の周りには心臓自体に栄養を送るための冠動脈という血管が走っています。この「冠動脈が完全にふさがって血液が通らなくなる」と、その部分の心臓の細胞が壊死してしまい、心臓の動きが急激に悪くなります。これを心筋梗塞と呼びます。
心筋梗塞の原因は?
- タバコ、アルコール
- 不眠
- 過労
- ストレス
- 糖尿病
- 高脂血症
- 肥満
- 運動不足
症状
- 胸痛(15~30分以上)
- 胸の締め付け感
- 顎、みぞおちの痛み
- 左手、左肩の痛み
- 冷や汗
- 嘔吐
- 呼吸困難
心筋梗塞の症状は、突然の前胸部の痛み、締め付け感が出現し、稀に左手や左肩、みぞおちなどに拡がることがあります。狭心症と違い、胸の痛みは15~30分以上継続し、なかなか改善しません。症状が悪化すると、冷や汗や嘔吐、呼吸困難を生じることもあります。
検査
- 心電図
- 採血検査
- 胸部レントゲン
- 冠動脈造影検査
当院を心筋梗塞疑いで来院された患者さまには、これまでの病気の経験や現在の内服薬、タバコ歴、胸痛の出現状況などを伺います。同時にできる限り早く心電図検査を行い、心筋梗塞が怪しい場合には速やかに近隣の循環器専門施設に救急搬送させていただきます。
心電図で明らかな所見がない場合には、採血検査や胸部レントゲン検査等を行い、やはり心筋梗塞が疑わしい場合には近隣の救急病院を紹介させていただきます。
心筋梗塞の治療
- 酸素吸入
- 血栓溶解療法
- 冠動脈形成術
以下は当院の院内での治療ではなく、救急搬送後の病院での一般的な治療になります。
急性心筋梗塞の方が救急受診をされた場合、酸素状態が悪い場合には酸素吸入をし、不整脈や血圧変化などの状態に応じて治療を行いながら、迅速に冠動脈造影検査を行います。冠動脈造影検査を行うことで、冠動脈の詰まっている部位がわかり、この詰まってしまった血管を再度還流させるための治療を行います。この方法としては血栓溶解療法や冠動脈形成術などがあります。
不整脈
不整脈って何でしょう?
一般成人の心臓は1分間に50-90回定期的なリズムで収縮し、身体全体に血液を送り出しています。このリズムが乱れることを不整脈と呼び、脈が正常よりも速くなる「頻脈」や、脈が正常よりも遅くなる「徐脈」、また、予定外のタイミングで脈が出現する「期外収縮」など、様々なタイプがあります。
たとえ不整脈があっても、日常生活に支障がなければ放置しておいてよいものもあれば、逆に自覚症状がなくても治療を要するものもあり、不整脈の種類により治療方針は変わってきます。
不整脈の原因は?
- 心臓の病気(心筋梗塞、心筋症など)
- 電解質の乱れ
- 甲状腺機能異常
- 薬剤性
- ストレス
- 高血圧
- 遺伝
不整脈の原因は多岐にわたりますが、代表的なものとして、心筋梗塞や心筋症など、心臓自体の筋肉に異常が起こり、それに伴って不整脈が出現することがあります。またナトリウムやカリウム、カルシウムなど電解質に異常や甲状腺ホルモンの異常により頻脈や徐脈、その他の不整脈が生じることもあります。また、現在内服されているお薬の副作用で不整脈を生じることもあります。ストレス等が強くかかることにより、自律神経が乱れて動悸を生じたり、高血圧が継続することで不整脈を生じることもあります。これらのような原因が特定できず、遺伝により不整脈を発症することもあり、不整脈を疑う患者さまにはご家族の不整脈歴などを確認させていただく場合もあります。
症状
- 動悸
- 脈が飛ぶ
- 胸の違和感
- 胸の気持ち悪さ
- ぼーっとする
- めまい
不整脈の典型的な症状は、動悸です。胸にドキドキした感じを覚え、人によってはぼーとしたり、めまい感を覚えることもあります。不整脈で最も多い「期外収縮」では、まったく予期しないタイミングで脈が飛び、そのたびに胸に違和感を覚えたり、むかつきを感じる方もおられます。
検査
- 心電図
- 採血検査
- 24時間ホルター心電図
当院を不整脈疑いで来院された患者さまには、これまでの病気の経験や現在の内服薬などを伺いながら原因を探していきます。外来で心電図検査を行い、現時点で不整脈が生じていないか確認します。また、不整脈の種類によっては採血検査を行い、甲状腺ホルモンやその他原因となる異常がないかを精査していきます。これらの結果で、精査の必要な不整脈である場合には、24時間ホルター心電図検査(胸に心電図計を装着し24時間日常生活をしながら心電図測定を行うもの)をお勧めし、循環器専門外来に紹介させていただく場合もあります。
不整脈の治療
- 酸素吸入
- 血栓溶解療法
- 冠動脈形成術
以下は当院の院内での治療ではなく、救急搬送後の病院での一般的な治療になります。
急性心筋梗塞の方が救急受診をされた場合、酸素状態が悪い場合には酸素吸入をし、不整脈や血圧変化などの状態に応じて治療を行いながら、迅速に冠動脈造影検査を行います。冠動脈造影検査を行うことで、冠動脈の詰まっている部位がわかり、この詰まってしまった血管を再度還流させるための治療を行います。この方法としては血栓溶解療法や冠動脈形成術などがあります。