筋炎
筋炎とは
筋炎とは、筋肉の炎症と書くように、皮膚や筋肉に炎症が起こってさまざまな症状を生じる膠原病の一つです。大きく分けて、皮膚に症状のないものを多発性筋炎と呼び、皮膚と筋肉の両方に炎症を起こすものを皮膚筋炎と呼びますが、近年、特に皮膚筋炎では原因となるさまざまな抗体が判明してきており、抗体の種類によってどのような特徴が出現するのか予測できるようになってきました。
筋炎の疫学・原因
難病情報センターの統計によると、日本では多発性筋炎・皮膚筋炎の患者さまは2万人以上おられると考えられています。男女比は1:3で女性に多く、小児にも生じることがありあります。多発性筋炎・皮膚筋炎の原因は現在のところ不明です。
筋炎の症状
多発性筋炎・皮膚筋炎では、だるさや食欲低下、体重減少などの全身症状に加えて、四肢の筋肉痛、筋力低下を生じます。筋力低下に伴って家事や仕事で手を上げる動作がやりにくくなったり、起き上がる動作が難しくなります。また、のどの筋肉も同様に低下するため、物を飲み込む力が弱くなり、むせが生じ、誤嚥をすることがあります。皮膚筋炎では、筋力低下に加えて湿疹を生じることが特徴的です。
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皮膚症状
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- ゴットロン丘疹
- ヘリオトロープ疹
- ショール徴候
- メカニックスハンド
- レイノー症状
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肺障害
- 多発性筋炎・皮膚筋炎では、肺に間質性肺炎を呈することがあります。筋炎の種類により急速に進行して悪化するタイプの間質性肺炎もあり、定期的なレントゲン・胸部CTの評価が必要な場合があります。
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悪性腫瘍
- 筋炎の患者さまでは、一般人と比べ悪性腫瘍が約2-3倍発症しやすいことが報告されています。そのため、筋炎を診断した場合には、必ず全身の悪性腫瘍のスクリーニングをすることが大切です。
筋炎の検査
- 採血検査:筋炎に特徴的な抗体などを含めて評価します
- 尿定性・沈査:尿中ミオグロビン、クレアチンなど筋障害の度合いの評価
- 筋電図:筋炎に特徴的な筋電図の評価
- 皮膚・筋生検:筋炎に特徴的な病理所見の評価
- 胸部レントゲン/胸部CT/肺機能検査:間質性肺炎の評価
- 腎臓内科受診:腎生検の依頼など
- 悪性腫瘍検索:腹部エコー、胃カメラ、大腸カメラなど
当院の外来で筋炎を疑った場合には、筋炎に特異的な抗体検査などの採血、尿検査、胸部レントゲン検査などを行い、全身の評価を行います。そこで尚、筋炎の疑いが濃厚の場合には、近隣の大病院(大学病院、赤十字病院等)に紹介させていただき、さらに詳しい検査を行います。筋炎を疑った場合に(主に入院で)行う検査の例は上記のようになります。
筋炎の診断基準
皮膚筋炎・多発性筋炎の診断には、これまでBohanらの診断基準(1975年)を用いることが多かったです。その後、2015年に厚労労働省研究班より改訂診断基準が提唱され、現在はこれらを総合的に用いて、診断を行っています。
筋炎の治療
- 副腎皮質ステロイド
- 免疫抑制薬
- ガンマグロブリン大量静脈注射療法(IVIG)
筋炎に対しては副腎皮質ステロイドでの治療が原則になります。ステロイドのみで治療が困難な場合には免疫抑制剤を追加していきます。嚥下障害などの症状が改善しない場合にはガンマグロブリン大量静脈注射療法(IVIG)を行い、治療を強化して少しでも早く症状が改善していくように調整していきます。