全身性強皮症
全身性強皮症とは
強皮症は、強い皮の症状と書くように、全身の組織が硬くなってさまざまな症状を生じる病気のことです。強皮症は大きく分けて全身性強皮症と限局性強皮症に分けられます。限局性強皮症は内臓に障害を起こさない、皮膚にのみ生じる病気です。一方、全身性強皮症は皮膚が硬くなることに加えて、内臓にも障害が起こりさまざまな症状を起こします。
全身性強皮症は、さらに全身性強皮症に典型的な症状を示す「びまん皮膚硬化型全身性強皮症」と、軽症の「限局皮膚硬化型全身性強皮症」に分けることもあります。
全身性強皮症の疫学・原因
難病情報センターの統計によると、日本では全身性強皮症患者さまは2万人以上おられると考えられています。全身性強皮症患者さまの男女比は1:12で、30-50歳代の女性に多いです。 全身性強皮症の原因は現在のところ不明です。
全身性強皮症の症状
全身性強皮症では、皮膚を含めた全身の臓器の硬化により様々な症状を起こします。多くの全身性強皮症患者さまに共通して、レイノー症状、皮膚硬化、爪の異常などをきたします。
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皮膚症状
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- レイノー症状
- 皮膚硬化
- 爪上皮延長・出血
- 指先の瘢痕・潰瘍
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消化器症状
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- 舌小帯の短縮
- 消化管の蠕動運動低下
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心臓・肺障害
- 全身性強皮症により心臓の筋肉に線維化が起こることで、心臓の拡張障害(心臓が拡がりにくくなる)や不整脈を生じることが生じます。また肺動脈の壁に線維化が生じることで肺高血圧症を生じ、心不全を生じることもあります。一方、肺の組織にも全身性強皮症により線維化が生じ、間質性肺炎を呈することがあります。
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腎臓障害
- 腎臓の血管が細くなったり、詰まったりすることで腎血流量が低下し、異常な高血圧や腎不全を生じる全身性強皮症腎を生じることがあります。
全身性強皮症のスコア
全身性強皮症の患者さまの皮膚の硬化の度合いを評価するために、スキンスコアを用いることがあります。皮膚を指先で小さくつまんだ感じと、指の腹で大きくつまんだ感じとその時の皮膚の厚みで0-3点で評価します。採点17カ所(最大51点)は、左右の手指、手背、前腕、上腕、大腿、下腿、足背の14か所と顔、前胸部、腹部の3か所で行います。
※手指はPIPとMCPの間をつまみます。
※一つの部位で硬化に違いがある場合は最大のスコアを採用します。
全身性強皮症の検査
- 採血検査:全身性強皮症に特徴的な抗体などを含めて評価します
- 尿定性・沈査:血尿・タンパク尿などの評価
- 心電図、心Echo:不整脈、心臓の機能評価、肺高血圧の評価
- 胸部レントゲン/胸部CT:間質性肺炎の評価
- 腎臓内科受診:腎生検の依頼など
- 皮膚科受診:皮膚生検にて皮膚硬化の評価
- 消化管造影、胃カメラ:食道の蠕動運動や逆流性食道炎の評価
当院の外来で全身性強皮症を疑った場合には、全身性強皮症に特異的な抗体検査などの採血、尿検査、胸部レントゲン検査などを行い、全身の評価を行います。全身性強皮症の疑いが濃厚の場合には、近隣の大病院(大学病院、赤十字病院等)に紹介させていただき、さらに詳しい検査を行います。全身性強皮症を疑った場合に(特に入院で)行う検査の例は上記のようになります。
全身性強皮症の診断基準
全身性強皮症の診断には、厚生労働省研究班の2003年の診断基準および米国リウマチ学会の分類基準(2013年改訂)を参考に総合的に行います。
全身性強皮症の治療
- 副腎皮質ステロイド
- 免疫抑制薬
- 胃酸分泌抑制薬
- 血管拡張薬
- その他、各症状に対する対症療法
現時点では、根本的に全身性強皮症を治癒できるお薬はありません。ただ、早期の皮膚硬化に対してはステロイドや免疫抑制剤が有効な場合があります。また、全身性強皮症の間質性肺炎に対してはステロイドや免疫抑制剤を用いて悪化を抑えるよう治療を行います。肺高血圧症に対しては血管拡張薬等を用いて悪化を抑えます。また、消化管の線維化に伴う逆流性食道炎に対しては胃酸分泌抑制剤や消化管運動の促進薬を用いていきます。レイノー症状や皮膚潰瘍に対しては血流改善薬や血管拡張剤などを併用して、楽に生活できるように調整を行っていきます。